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豊野の家

 

所在地  美作市
主要用途 住宅
敷地面積 702.4㎡
建築面積 256.4㎡
延床面積 162.8㎡(改修部分)
構造規模 木造平屋建
撮 影  スタジオレム 平桂弥
 岡山県北部の古民家の再生計画である。施主は両親が亡くなられて長く空き家になっていた家に、定年を機にUターンを決めた。近い将来、兄妹も集まって田舎暮らしを楽しむことが与条件である。建築当初は茅葺屋根であったこの民家は、家族構成に合わせて、間取りや屋根の改修など、住みながら手を加えられてきている。
 今回の再生計画では、構造的な補強と、主に昭和50年代に増築・改修された部分の減築を行い、住宅の架構をシンプルな長方形に戻した。当初材の栗や欅の柱、大きく曲がった梁、黒く煤けた土壁は、建築当初からこの場所で生活の中に有ったものである。生活様式の変遷を経て再び生活空間の場に現われた。
 現代の田舎暮らしで魅力的なスペースになる土間空間を、住まいの内部と外部の両方に広く計画した。玄関は曖昧で、外部の土間から内部土間の薪ストーブのある場所が、ご近所とのコミュニケーションの場となるはずである。その設えの一つとして藍染作家に協力いただいた暖簾が、土間とダイニングを緩やかに仕切っている。
 この計画は、施主ご夫婦と兄妹が再び集まって暮らすという住まい方が特徴的である。個人の空間は最小限担保した上で、家族のコモンスペース(土間・広間)を広く計画した。江戸末期と思われる古い材料や初期の間取り、柱・梁を最大限に活かしつつ、終の棲家としても対応できる柔軟性のある計画を提案した。